ナルシストCEOが企業経営に与える影響について、興味深い研究結果が発表されました。
アメリカの研究チームが、コンピュータ業界の大企業を調査したところ、CEOの性格によって会社の戦略や業績に大きな違いが出ることが分かったのです。
特に、自己愛が強いナルシスト気質のCEOは、大胆な買収を仕掛けたり、業績の変動が大きくなったりと、目立った特徴が見られました。
「It’s All about Me: Narcissistic Chief Executive Officers and Their Effects on Company Strategy and Performance」と題されたこの論文は、トップの性格が組織に与える影響の大きさを明らかにしています。
CEOの個性をいかに生かし、組織力に変えていくか。
それは現代の企業経営に欠かせない視点と言えるでしょう。
この記事では、ナルシストCEOの功罪について、研究結果を交えながら分かりやすく解説していきます。
今回も、性格研究者で悪者図鑑著者のトキワ(@etokiwa999)が解説していきます。
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目次
ナルシストCEOとは?ダークトライアドの一つ、ナルシシズムを解説
ナルシストの定義と特徴
ナルシストとは、自己愛が極端に強い人を指します。
自分を過大に評価し、他者からの賞賛を常に求めます。
一方で批判には過敏に反応し、怒りっぽくなる傾向もあります。
ナルシストの主な特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 自己中心的で、他者の感情に鈍感
- 自分の外見や能力に誇りを持ち、自慢するのが好き
- 賞賛や注目を集めたがる
- 批判を受け入れられず、怒りっぽい
ナルシストは自信家に見えますが、内面は脆弱です。
他者からの賞賛によって自尊心を保っているのです。
ナルシシズムは性格特性の一つで、程度の差はあれ誰にでもあるものです。
しかし行き過ぎると、対人関係や社会生活に支障をきたします。
ダークトライアドとは何か
ダークトライアドとは、ナルシシズム、サイコパシー、マキャベリアニズムという3つの性格特性の組み合わせを指します。
いずれも自己中心的で、他者を操作する傾向が強い特徴です。
ダークトライアドの3つの性格特性は以下のとおりです。
- ナルシシズム:自己愛が極端に強い
- サイコパシー:良心や罪悪感が欠如している
- マキャベリアニズム:達成のためには手段を選ばない
これらの性格特性を持つ人は、一見魅力的に見えることもあります。
しかし長期的には、対人関係でトラブルを起こしやすいとされています。
ダークトライアドは、リーダーシップや経営者の研究でも注目されています。
ナルシシズムが強い経営者は、大胆な決断を下す一方でリスクを過小評価しがちだからです。
ダークトライアドのバランスを理解することは、組織運営においても重要な視点と言えるでしょう。
ナルシシズムはどのように測定されるのか
ナルシシズムは質問紙や面接によって測定されます。
代表的なのは自己愛人格目録(NPI)という質問紙です。
NPIは40の質問項目からなり、自己愛傾向の強さを測ります。
質問は強制選択式で、ナルシシズムを反映する文章を選ぶ形式です。
例えば以下のような質問があります。
- 私は才能に恵まれた人間だ
- 私は人々に影響を与えるのが得意だ
- 私は他者よりも優れている
また面接では、自己評価の高さや賞賛欲求の強さなどを見極めます。
言動や身なりからもナルシシズム傾向をうかがい知ることができるでしょう。
ただし質問紙も面接も、自己報告に基づくデータです。
無意識の側面までは測れないという限界もあります。
そのため、複数の方法を組み合わせて総合的に判断することが大切です。
ナルシシズムの測定は、性格研究や臨床場面で活用されています。
組織のリーダー選びにおいても、ナルシシズムの評価は一つの指標となり得るでしょう。
CEOのナルシシズム度はどう測られたのか
CEOのナルシシズム度を測定するのは容易ではありません。
質問紙や面接を用いるのは現実的ではないからです。
そこで研究者たちは、間接的な指標を用いる方法を考案しました。
CEOの意思が反映されやすく、ナルシシズムの特徴を捉えられる指標を選んだのです。
具体的には以下の5つの指標を用いました。
- アニュアルレポートにおけるCEOの写真の目立ち度合い
- プレスリリースにおけるCEOの目立ち度合い
- インタビューにおける一人称単数代名詞の使用頻度
- 報酬の第2位の経営者に対する比率(キャッシュ報酬)
- 報酬の第2位の経営者に対する比率(非キャッシュ報酬)
これらの指標は、客観的に測定できる上に、CEOの裁量が大きく反映されます。
つまりCEOの性格特性を間接的に測る指標として適しているのです。
研究者たちは、これらの指標を標準化して合算し、ナルシシズム指数を算出しました。
この方法により、大規模サンプルのCEOのナルシシズム度を推定することに成功したのです。
CEOの性格を測定するのは困難を伴いますが、工夫次第で可能になります。
重要なのは、測定したい概念を適切に反映する指標を見出すことでしょう。
研究で使われた5つの指標とは
CEOのナルシシズム度を測る5つの指標について詳しく見ていきましょう。
第一の指標は、アニュアルレポートにおけるCEOの写真の目立ち度合いです。
ナルシストは注目を集めたがる傾向があるため、大きく目立つ写真を使うと考えられます。
第二の指標は、プレスリリースにおけるCEOの目立ち度合いです。
ナルシストは自分の功績を誇示したがるため、プレスリリースでも頻繁に名前が出てくると予想されます。
第三の指標は、インタビューにおける一人称単数代名詞の使用頻度です。
ナルシストは自己中心的な言動が多いため、「私」「僕」などの一人称単数代名詞を多用すると考えられます。
第四と第五の指標は、CEOの報酬と第2位の経営者の報酬の比率です。
ナルシストは自分を特別視する傾向があるため、他の経営者よりも高い報酬を求めると予想されます。
キャッシュ報酬と非キャッシュ報酬の両方を指標に含めることで、報酬面でのナルシシズムを多角的に捉えています。
これらの指標は、いずれもCEOのナルシシズム度を反映していると考えられます。
複数の指標を組み合わせることで、測定の妥当性を高めているのです。
研究に用いる指標は、測定対象と目的に応じて慎重に選定する必要があります。
理論的な裏付けがあり、測定可能で、対象者の特性をよく反映する指標が求められるでしょう。
ナルシストCEOが企業の戦略に与える影響
ナルシストCEOと企業戦略の関係
彼らは、大胆で目立つ戦略を好む傾向があります。
保守的な戦略よりも、革新的で注目を集める戦略を選びがちなのです。
その理由は、ナルシストの性格特性に由来します。
ナルシストは自己顕示欲が強く、賞賛を得ることに強い関心を持っています。
大胆な戦略を打ち出せば、注目を集められると考えるのです。
また自信過剰な面もあり、リスクを過小評価しがちです。
慎重さに欠ける意思決定をしてしまう可能性があります。
さらにナルシストは変化を好む傾向もあります。
現状維持よりも、変革を求める姿勢が強いと言えるでしょう。
このようにナルシストの性格特性は、企業戦略に大きな影響を及ぼします。
CEOの意思決定スタイルが、組織の方向性を左右することを示唆しているのです。
ナルシストCEOのもとでは、大胆な戦略が立てられやすいでしょう。
ただしそれが適切かどうかは、慎重に見極める必要があります。
性格と戦略の関係を理解することは、組織運営において重要な視点と言えます。
ナルシストCEOは戦略を頻繁に変更する?
ナルシストCEOのもとでは、戦略が頻繁に変更されやすい傾向があります。
変化を好むナルシストの性格が、戦略の安定性に影響しているのです。
一つの戦略を長期的に遂行するよりも、目新しい戦略を次々と打ち出したがります。
その理由として、以下のような点が考えられます。
- 自己顕示欲を満たすため、常に注目を集める必要がある
- 自信過剰なため、新しい戦略のリスクを過小評価しがち
- 飽きっぽい性格で、同じことを長く続けるのが苦手
このため、ナルシストCEOの下では戦略が頻繁に変更されるリスクがあります。
一貫性を欠いた経営は、社内外の混乱を招く恐れがあります。
戦略の遂行には一定の時間が必要です。
短期間で方向転換を繰り返していては、成果を上げることは難しいでしょう。
ただし、変化の激しい業界では柔軟な戦略修正が求められます。
ナルシストの機敏さが強みとなる場合もあるでしょう。
大切なのは、自社の置かれた環境を見極め、適切なタイミングで戦略を見直すことです。
ナルシストCEOの特性を理解し、長所を生かしつつ短所をカバーする工夫が求められます。
戦略の頻繁な変更は、ナルシストCEOの特徴の一つと言えるでしょう。
組織としては、戦略の一貫性とバランスを保つ仕組みづくりが重要になります。
ナルシストCEOと企業買収の関係
ナルシストCEOは、企業買収に積極的な傾向があります。
買収は注目を集めやすく、自己顕示欲を満たす格好の機会だからです。
買収を通じて企業規模を拡大すれば、CEOとしての存在感も高まります。
また、ナルシストは自信過剰なため、買収のリスクを過小評価しがちです。
難しい買収でも成功できると楽観視し、強気の判断を下す可能性があります。
実際、ナルシストCEOのいる企業では、買収の頻度が高くなる傾向が報告されています。
ただし買収の成否は、CEOの性格だけで決まるわけではありません。
以下のような要因が、買収の成功に影響すると考えられています。
- 買収価格の適正さ
- 買収先企業との戦略的な適合性
- 買収後の統合プロセスの巧拙
ナルシストCEOは、これらの要因を慎重に見極める必要があります。
自信過剰な判断では、買収が失敗に終わるリスクが高まるでしょう。
買収は企業戦略の重要な選択肢の一つです。
しかし、安易な買収は企業価値を毀損しかねません。
ナルシストCEOのもとでは、買収を慎重に吟味する姿勢が特に大切になります。
適切な買収を通じて、企業の成長を実現していくことが求められるのです。
ナルシストCEOと企業買収の関係は、複雑な側面を持っています。
CEOの性格と、買収の是非や進め方との兼ね合いを慎重に判断することが重要でしょう。
ナルシストCEOは大規模な買収を好む?
ナルシストCEOは大規模な買収を好む傾向があります。
規模の大きな買収ほど注目を集めやすく、ナルシストの自己顕示欲を満たせるからです。
また、ナルシストは自信過剰で、リスクを過小評価しがちです。
大規模買収に伴う困難や、失敗のリスクを軽視してしまう可能性があります。
実際、以下のようなデータがあります。
- ナルシストCEOがいる企業の買収規模は、そうでない企業よりも大きい
- ナルシストCEOは、買収に伴うプレミアム(割増金)を多く支払う傾向がある
ナルシストCEOは、買収を自己顕示の手段として用いているのかもしれません。
ただし、大規模買収には大きなリスクが伴います。
目先の注目を集めることだけを重視し、長期的な企業価値を毀損するようでは本末転倒です。
以下のような点に注意が必要でしょう。
- 買収価格が適正かどうか
- 買収先企業との戦略的な適合性
- 買収後の統合プロセスの巧拙
大規模買収は、失敗すれば企業に大きな負担を強いることになります。
ナルシストCEOのもとでは、買収の是非を慎重に見極める必要があるのです。
研究結果が示す戦略への影響とは
研究結果は、ナルシストCEOが企業戦略に大きな影響を及ぼすことを示唆しています。
具体的には以下のような影響が明らかになりました。
- 戦略の大幅な変更が起こりやすい
- 企業買収の件数が多くなる
- 企業買収の規模が大きくなる
つまり、ナルシストCEOのもとでは、大胆で目立つ戦略が選ばれやすいと言えるでしょう。
変化を好み、リスクを恐れないナルシストの性格が、戦略に反映されているのです。
ただし、こうした戦略が常に適切とは限りません。
自社の強みや市場環境を踏まえず、ナルシストの自己顕示欲だけで戦略を決めてしまうと、失敗のリスクが高まります。
大切なのは、CEOの性格と、自社に合った戦略とのバランスを取ることです。
ナルシストのパワーを生かしつつ、行き過ぎには注意が必要でしょう。
また、ナルシストCEOのもとでは、社内の意思決定プロセスにも注意が必要です。
CEOの意向だけで物事が決まってしまうと、現場の意見が反映されにくくなります。
戦略の実行力が弱まる恐れもあるでしょう。
ナルシストCEOの影響力の大きさを認識し、適切にコントロールすることが重要と言えます。
研究結果は、ナルシストCEOが企業戦略に大きな影響を及ぼすことを明らかにしました。
その影響力を企業の発展につなげるには、バランスの取れたマネジメントが欠かせません。
CEOの個性と、組織の力を上手く組み合わせる工夫が求められるでしょう。
ナルシストCEOが企業業績にもたらす影響
ナルシストCEOと企業業績の関係
彼らは、企業業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
その影響は、プラスとマイナスの両面があると考えられています。
まず、ナルシストCEOのプラスの影響としては、以下のような点が挙げられます。
- 大胆な戦略により、市場を開拓できる可能性がある
- 強力なリーダーシップで、組織を牽引できる
- 自信に満ちた態度が、投資家や顧客の信頼を得られる
ナルシストのカリスマ性や行動力が、業績の向上につながる場合があるのです。
一方で、ナルシストCEOのマイナスの影響として、以下のような点が指摘されています。
- リスクの高い戦略で、失敗のリスクが高まる
- CEO個人の意向だけで経営が行われ、組織の実力が発揮されない
- 倫理観の欠如により、不祥事を起こすリスクがある
ナルシストの自己中心性や、行き過ぎた自信が、業績を悪化させる要因になり得るのです。
ナルシストCEOが業績に及ぼす影響は、一概には言えません。
状況に応じて、プラスにもマイナスにもなり得るでしょう。
大切なのは、ナルシストの特性を理解した上で、上手くコントロールすることです。
強みを生かしつつ、弱みをカバーする工夫が求められます。
ナルシストCEOと企業業績の関係は、複雑な側面を持っています。
CEOの個性と、組織のマネジメントのバランスが、業績を左右すると言えるでしょう。
ナルシストCEOのいる企業の業績の特徴は?
ナルシストCEOのいる企業の業績には、特徴的な傾向が見られます。
その最大の特徴は、「極端な業績」が現れやすいことです。
大成功を収める一方で、大失敗に終わるケースも少なくありません。
その理由として、以下のような点が考えられています。
- リスクの高い戦略を好むため、成功すれば大きな利益につながる
- しかし、失敗すれば大きな損失を被ることになる
- ナルシストの自信過剰さが、リスクの見極めを甘くさせている
ナルシストCEOのもとでは、業績が安定せず、極端な結果が出やすいと言えるでしょう。
「大化けか、大失敗か」といった、両極端な業績が現れるリスクが高いのです。
実際、ナルシストCEOが率いる企業の業績を分析したデータがあります。
それによると、ナルシストCEOのいる企業では、以下のような傾向が見られました。
- 業績のばらつきが大きい
- 最高益と最低益の差が大きい
- 赤字に陥るリスクが高い
こうしたデータは、ナルシストCEOのもとでは、業績が不安定になりやすいことを示唆しています。
安定的な業績よりも、極端な業績が現れやすいと言えるでしょう。
ただし、ナルシストCEOが必ずしも悪い業績につながるわけではありません。
大胆な戦略が奏功し、大成功を収める可能性もあるのです。
極端に良い業績と悪い業績が交互に?
ナルシストCEOのいる企業では、極端に良い業績と悪い業績が交互に現れる傾向があります。
ある年は大成功を収めても、翌年は大失敗に見舞われることが少なくないのです。
その理由として、以下のような点が考えられています。
- ナルシストは飽きっぽく、同じ戦略を長く続けることが苦手
- 常に新しい戦略を求めるため、戦略が安定しない
- 成功体験が自信を過剰にし、リスクを軽視しがちになる
つまり、ナルシストCEOのもとでは、長期的な視点での戦略の一貫性が保ちにくいのです。
短期的な成功を追い求める余り、持続的な業績の安定が難しくなる傾向があります。
このような傾向は、データからも裏付けられています。
ナルシストCEOのいる企業を分析したところ、以下のような結果が得られました。
- 前年の業績が良ければ、次年度の業績が悪化しやすい
- 逆に、前年の業績が悪ければ、次年度の業績が改善しやすい
- 業績の浮き沈みが激しく、安定しない
つまり、ナルシストCEOのもとでは、「業績の振り子」が大きく揺れ動く傾向があるのです。
極端に良い業績と悪い業績が交互に現れ、安定的な成長が難しくなります。
ただし、この傾向は業界によって異なる可能性があります。
変化の激しい業界では、ナルシストの柔軟性が強みになるかもしれません。
業績の変動幅が大きくなる傾向も
ナルシストCEOのもとでは、業績の変動幅が大きくなる傾向があります。
つまり、業績の上昇幅も下降幅も、ともに大きくなりやすいのです。
その理由として、以下のような点が考えられています。
- 大胆な戦略を好むため、成功すれば大きな業績アップにつながる
- しかし、失敗すれば業績の大幅な悪化を招く
- リスクテイクを厭わない姿勢が、業績の振れ幅を大きくしている
ナルシストCEOは、小手先の戦術よりも、大胆な戦略を好む傾向があります。
それが業績の変動幅を大きくする要因の一つと言えるでしょう。
実際、ナルシストCEOのいる企業の業績を分析したデータがあります。
それによると、以下のような傾向が見られました。
- 売上高の変動幅が大きい
- 利益の変動幅が大きい
- キャッシュフローの変動幅が大きい
これらのデータは、ナルシストCEOのもとでは、業績の安定性が損なわれやすいことを示唆しています。
大きな成功を収める可能性がある反面、大きな失敗のリスクも高いと言えるでしょう。
平均的な業績への影響は見られず
ナルシストCEOの企業業績への影響を調べた研究によると、興味深い結果が得られています。
- ナルシストCEOの企業の平均ROE(自己資本利益率)は、そうでない企業と差がない
- ナルシストCEOの企業の平均売上高成長率も、そうでない企業と差がない
- ナルシストCEOの企業の平均株式リターンも、そうでない企業と差がない
これらのデータは、ナルシストCEOの存在が、平均的な業績水準には影響しないことを示唆しています。
優れた業績を上げる企業もあれば、低迷する企業もあり、全体としては平均的なのです。
ただし、これはナルシストCEOの影響力が小さいことを意味するわけではありません。
前述の通り、ナルシストCEOのもとでは極端な業績が現れやすく、変動幅も大きくなる傾向があります。
平均値だけを見ると、その影響が見えにくくなってしまうのです。
大切なのは、ナルシストCEOの功罪を見極め、上手くマネジメントすることでしょう。
そのためには、以下のような取り組みが有効と考えられます。
- ナルシストCEOの行動をモニタリングし、過度なリスクテイクを抑制する
- 経営陣のダイバーシティを確保し、CEOの独断を防ぐ
- 中長期的な視点での戦略の一貫性を維持する
- 業績の変動を緩和するセーフティネットを準備する
彼らの影響力の大きさを認識し、適切にマネジメントすることが肝要です。
ナルシストCEOの功罪と企業文化への示唆
ナルシストCEOのメリットとデメリット
まず、ナルシストCEOのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- カリスマ性があり、組織をまとめる求心力を持っている
- 自信にあふれ、困難な状況でも決断力を発揮できる
- 大胆な戦略を打ち出し、イノベーションを推進できる
ナルシストの強いリーダーシップは、時として組織を活性化させる力になり得ます。
変革が求められる局面では、特に威力を発揮するかもしれません。
一方で、ナルシストCEOのデメリットとしては、以下のような点が指摘されています。
- 自己中心的で、部下の意見に耳を貸さない
- リスクを過小評価し、無謀な決定を下す危険性がある
- 倫理観に欠け、不正のリスクが高まる
ナルシストの自信過剰さや自己愛の強さは、時として組織を危険にさらす要因にもなります。
持続的な成長を阻害する恐れもあるでしょう。
ナルシストCEOの功罪を考える上では、以下の点がポイントになります。
- ナルシストの特性をいかにコントロールするか
- ナルシストの行動をいかにモニタリングするか
- ナルシストに過度に依存しない組織をいかに作るか
ナルシストのパワーを適切にマネジメントし、組織の力を最大限に引き出すことが求められるのです。
ナルシストCEOの是非は、一概には言えません。
メリットを生かしつつ、デメリットを最小化する工夫が必要不可欠です。
そのバランス感覚が、ナルシストCEOのマネジメントの鍵を握ると言えるでしょう。
ナルシストCEOに向いている業界や企業文化は?
ナルシストCEOが力を発揮しやすい業界や企業文化には、一定の特徴があると考えられています。
- 変化の激しい業界(IT、エンタメなど)
- イノベーションが求められる業界(ベンチャー、バイオテクノロジーなど)
- 個人の力が物を言う業界(金融、不動産など)
これらの業界では、大胆な意思決定や強いリーダーシップが求められることが多いため、ナルシストCEOの特性が生きる可能性があります。
変化への素早い対応や、新しいアイデアの導入などに長けているからです。
一方で、ナルシストCEOに向いている企業文化としては、以下のような特徴が考えられます。
- トップダウン型の意思決定が浸透している
- 個人の業績を重視する風土がある
- 失敗を恐れずチャレンジする文化がある
このような企業文化では、ナルシストCEOの独断的なリーダーシップが受け入れられやすいと言えます。
CEOの意向が組織全体に浸透しやすく、大胆な戦略にもスムーズに移行できるでしょう。
ただし、ナルシストCEOに任せきりになるのは危険です。
あくまでも、組織としてのガバナンスを効かせることが重要です。
以下のような取り組みが求められると言えるでしょう。
- CEOの暴走を防ぐ監視機能を強化する
- 経営陣のダイバーシティを確保し、CEOの独断を防ぐ
- 健全な企業文化の醸成に努める
組織としてのガバナンスを効かせ、健全なマネジメントを目指すことが肝要でしょう。
ナルシストCEOにふさわしくない状況とは?
ナルシストCEOが力を発揮しにくい状況も、いくつか考えられます。
例えば、以下のような業界や企業文化では、ナルシストCEOの特性がマイナスに働く恐れがあります。
- 安定性や継続性が重視される業界(インフラ、公共サービスなど)
- コンプライアンスが厳しく求められる業界(医療、教育など)
- 協調性や調和を大切にする企業文化
これらの状況では、ナルシストCEOの自己中心的な行動や、大胆すぎる意思決定が組織の足かせになりかねません。
安定的な運営や、ルールの遵守が何より求められる場面だからです。
また、以下のような状況でも、ナルシストCEOは力を発揮しづらいと言えます。
- 企業の信頼が失墜している時期
- 内部統制が弱く、ガバナンスが効いていない時期
- ステークホルダーとの関係性が悪化している時期
このような時期には、CEOの個人的な資質よりも、組織としての信頼回復や内部管理の強化が優先されます。
ナルシストCEOの独断的なリーダーシップでは、かえって事態を悪化させる恐れがあるでしょう。
ナルシストCEOにふさわしくない状況では、以下のような対応が求められます。
- ナルシストCEOの交代も視野に入れる
- 経営陣のダイバーシティを確保し、CEOの独断を防ぐ
- 内部統制の強化とガバナンスの充実を図る
- ステークホルダーとの関係修復に注力する
状況に応じて、ナルシストCEOの影響力をコントロールすることが肝要です。
ナルシストCEOをコントロールする方法
ナルシストCEOの功罪を踏まえ、そのパワーを適切にコントロールすることが重要です。
そのためには、以下のような方法が有効だと考えられています。
- ガバナンス体制の強化
- 取締役会の独立性を高め、CEOの監視機能を強化する
- 指名委員会・報酬委員会等の独立性を確保する
- 内部通報制度の整備など、牽制機能を強化する
- 経営陣のダイバーシティの確保
- CEOに異なる視点を提供できる経営陣を登用する
- 経営陣の出身背景や専門性に多様性を持たせる
- CEOの独断を防ぐ、健全な議論の文化を醸成する
- 企業文化の改革
- コンプライアンス意識の向上を図る
- 失敗を許容し、学習を促す文化を作る
- 社内コミュニケーションを活性化し、情報共有を図る
- ステークホルダーとの対話
- 株主や投資家との建設的な対話を心がける
- 従業員の声に耳を傾け、現場の意見を経営に反映させる
- 社会との対話を通じ、企業の社会的責任を果たす
これらの取り組みを通じ、ナルシストCEOのパワーを適切にコントロールすることが可能になります。
組織としてのチェック機能を高め、CEOの独断を防ぐ仕組みを整えることが肝要です。
また、ナルシストCEOの特性を理解し、その長所を生かしつつ短所をカバーする経営体制の構築も重要でしょう。
企業はナルシストCEOにどう対応すべきか
ナルシストCEOへの対応は、企業にとって重要な課題です。
ナルシストのパワーを生かしつつ、そのリスクを最小化するためには、以下のようなポイントを押さえることが大切だと考えられています。
- ナルシストCEOの理解に努める
- ナルシストの特性や行動パターンを理解する
- ナルシストのモチベーションを把握する
- ナルシストとのコミュニケーションのコツを学ぶ
- 組織としてのガバナンスを強化する
- 取締役会の監視機能を強化する
- 内部統制システムを整備する
- コンプライアンス体制を確立する
- 経営ビジョンを明確にする
- 企業の目指す方向性を明確に打ち出す
- ナルシストCEOのビジョンをすり合わせる
- 短期と長期のバランスの取れた経営を目指す
- 適材適所の人材配置を行う
- ナルシストCEOを補完する人材を登用する
- 経営陣のダイバーシティを確保する
- 社内の意見を集約し、経営に反映させる仕組みを作る
- 企業文化の醸成に努める
- コンプライアンス意識の向上を図る
- 失敗を許容し、学習を促す文化を作る
- 社内外のステークホルダーとの対話を重視する
これらの取り組みを通じ、ナルシストCEOの功罪を見極めながら、企業価値の向上を目指すことが重要です。
最後に
ナルシストCEOの特性を理解し、それを組織のパワーに変えていく視点が求められます。
ただし、ナルシストCEOへの依存は危険です。
あくまでも組織としてのマネジメント力を高め、CEOの暴走を防ぐセーフティネットを準備することが肝要でしょう。
企業はナルシストCEOにどう対応すべきか。
それは、ナルシストの理解に努め、ガバナンスを強化し、明確なビジョンを掲げ、適材適所の人材配置を行い、健全な企業文化を醸成することだと言えます。
ナルシストCEOのパワーを組織の力に変えていく知恵が、いま企業に求められているのです。
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ライター 兼 編集長:トキワエイスケ @etokiwa999
株式会社SUNBLAZE代表。子どもの頃、貧困・虐待家庭やいじめ、不登校、中退など社会問題当事者だったため、社会問題を10年間研究し自由国民社より「悪者図鑑」出版。その後も社会問題や悪者が生まれる決定要因(仕事・教育・健康・性格・遺伝・地域など)を在野で研究しており、社会問題の発生予測を目指している。凸凸凸凹(WAIS-Ⅳ)。