• Tokiwa Eisuke

全国民の賃金を上げるほどのサービスをつくる大企業が日本から生まれなくしてる3つの勘違い

更新日:2021年8月9日

知ってる人は知ってることだが、日本は他の先進国と比べて著しく賃金が上がっていない。参照「日本人が相対的に貧しくなっている? 各国の平均年収の推移を比較してみるとマジだった」「全労連作成」(もちろん賃金だけでなく他にも物価など色んな指標でみるべきです)

なぜなのか?


この原因は色々言われる。例えば、「買わない(売れない)→値段が安くなる→売上が低くなる→給与が下がる」といったデフレスパイラル。そもそもすでに物質的に豊かになったから幸せになって欲しいものがなくなった(経済成長の限界)。人口が少なくてもいいから能力の高い人材を作れなかった教育制度。などなど。


どれも正しいかもしれないが、僕が一番の原因だと思うのは、企業が人々の欲しいサービスを作ってこれなかったことだ。特にこの20年で市場が大きくなったインターネットの分野で海外では様々なサービス・商品が生まれている。


多様性があるが一方で治安がよくないアメリカではGoogle・Facebook・Amazon・Apple・MicrosoftからNetflix・Airbnb・Uberまで。アグレッシブな一方で品がない中国ではBaidu・Alibaba・TencentからDJI・DIDI・Xiaomiまで。大きく取り上げられずとも、ビジネスモデルを大きく転換できた会社がヨーロッパにはNokiaなど存在する。


さて一方で日本はどうかといえば、NECは業績不振、東芝はメモリ事業を外部に、Pioneerは香港系ファンドへ、SHARPはホンハイへ、スバルは検査不正、、、と挙げればキリがなく、スタートアップのユニコーンもメルカリのみ。盛り上がるサービスは国民の節約を助けるサービスばかり(ポイントやシェアリングエコノミー)。


とある本のタイトルに「Death by Amazon」というのがある。要はAmazonが色んな業界で展開することで、各業界の既存企業が死んでいくという意味だ。これはAmazonに限らない。


アメリカや中国のような長所・短所を日本で言うなら「マナーを守る所作の美しさはあるがお金を稼ぐ頭と行動力がない国」といったところか。


さらに3つの勘違い


ではなぜそんなに違いが生まれているのか?日本のビジネスマンには3つの勘違いがある。


(1)Technology(テクノロジー)


何かと「テクノロジー」が叫ばれる。AIやIoT、金融や医療との造語で「~Tech」とも呼ばれる。はたしてそこで使われる「テクノロジー」とはどういう意味なのか?


technologyを訳すと「技術」だが、伝統的な「日本の技術」とよく勘違いされた結果、日本のメーカーが衰退した。下町ロケットに出てくる部品のように隅々まで技巧をこらした職人技だ。


しかしこの時代のテクノロジーの意味合いはまったくもって違う。それはインターネットを使うということだ。プログラミングによって条件処理・ループ処理を行ってアルゴリズムを組み、ファイルはコピーでき、データベースの構造で保存できる


インターネット以前の機械はもっと単純な動きしかできなかったが、プログラミングによってより複雑に自動化を行うことができ、色んな条件に対応できるようになった。AIと呼ばれる機械学習も、ブロックチェーンもあくまでアルゴリズムの一つである。


(2)Innovation(イノベーション)


次の勘違いポイントは「イノベーション」である。最初にこれを訳したときに、技術を大事にする日本人らしく「技術革新」としたために、さらに日本的な技術に依存するようになっていく。一方で「イノベーションのジレンマ」の著者であるクレイトン・クリステンセンによれば、


技術」の定義:組織が労働力、資本、原材料、情報(インプット)を、価値の高い製品やサービス(アウトプット)に変えるプロセスのこと。 「イノベーション」の定義:これらの技術の変化のこと。

すごく簡単に言い直せば「製品やサービスを作る過程を変更すること」となる。インターネット以前はオフラインで行っていたことを、オンラインで行うことで過程は大きく変わる。例えば、それまで人件費をかけていた部分を、テクノロジーによって自動化する、といったことだ。実際、多くのイノベーションはインターネットを使ったビジネスモデルの転換にある。


(3)Startup(スタートアップ)


それはもう日本の職人技術で、技術革新を行うと考えていれば、メーカーが衰退するのは当然である。そして正しく理解すれば、インターネットを使い、ビジネスの手法を変え、業界に破壊をもたらす、その主体がまさにスタートアップというわけだ。


スタートアップとは「顕在化していない潜在的なニーズを掘り当てることで急成長する会社」である。例えばインターネット普及初期でいえば、オフラインの常識を生きていた人々にとってオンラインはまったく未知だが、オンライン化することでその既存のオフライン市場は破壊され、新しい市場が生まれるということだ。


よくスタートアップの成長曲線は「Jカーブ」と言われるが、その理由はまさに以下である。 ・顕在化しているニーズは少しだが、そのヒントから将来顕在化する潜在的ニーズを探し当てるための赤字期間が存在する。 ・潜在的ニーズが顕在化する際に、多くの消費者が簡単かつすぐにサービスを使えるようにするのがインターネット(Webサイトやアプリ)。 ・消費者がみんな似ている経済環境におり、そのためライフスタイルも似ているため、同じ潜在的ニーズを持っており、一気にサービスの購入になだれ込んでくる。 ・スタートアップ企業側は、その運営費用のみ一定に発生し、自然流入によって利益に対してとてもすくないプロモーション費用で行うことができる。 ・それまでの伝統的な会社は、スタートアップのスピード感と新たな手法に圧倒され、急激にそれまでの顧客をとられてしまい、破壊されてしまう。


さて、それでは日本のどの辺がスタートアップを勘違いしているというのだろうか?


国内のスタートアップは、海外でうまくいった事例を日本国内で行って、「国内産業に対して」新しい手法を導入している。確かに国内の業界だけでみれば手法が変わっているため「イノベーション」と言えるが、世界全体でみれば同じことを遅れて行っているだけなので別に何も変わっておらず、獲得できる市場は日本国内のみだ。


さらに、日本人の課題を解決するためにサービスを作った場合、日本人は「給料が上がっていない」「少子高齢化」「日本語がメイン」など他の国に再現しづらい(他の国の人にも使ってもらいづらい=スケールしづらい)ため、海外に国内のインターネットサービスが自然に展開されていくことは少ない。


新しい企業に投資を行う国内の投資家たちは、キャピタルゲインのために最低限のレベルで上場できる企業に投資するため、世界にないサービスである必要がないし、起業家側も投資されやすいサービスを作るため、世界的に新しくなることは滅多にない。


世界中で使われる全く新しいサービスが作れれば、サービスの受益者が増え国内の会社の売上があがる→賃金が上がるのだが、海外展開を支援する行政や大企業も同じように勘違いしているため的外れなことが多い。


結果どうなるか?


大企業は勘違いしたまま業績が悪くなりリソースは減る一方で、スタートアップは永遠に次の国内の大企業にはなれない状況。そしたら国外の元スタートアップ・新大企業が現れる。

賃金が低いまま・下がってしまうなら教育費を捻出しづらいから産まない人も増えるだろうし(少子化)、やっと優秀な人が出てきても海外のほうがちゃんと評価されるから国外にでていく(教育費をかけても国外企業の利益)。


国内の民間サービスがだめだから、国外の民間サービスを呼び込むしかないし、国内で量的に人材が不足するから短期的に量的に補うために外国人労働者を入れるだろうし、国内の資源も高く買ってくれるなら国外に売る人も増える。


外国人労働者が増えたからと言って一概に治安が悪くなるとは思えないが、「外国人が来たら治安が悪くなる」という偏見が外国人の精神的にも・空間的にも・経済的にも居場所をなくし、彼らによる犯罪が起こりやすくなったり、日本人による彼らへの犯罪も起こりやすくなる。


人によっては「分かりづらいことを分かりやすく説明できないとだめだ」と言うが、3つの勘違いを理解できる人の絶対数も少なかったし、理解して伝わったとしても(参照「スタートアップサイエンス」)投資家のマインドは「最低限の上場」である。


もし今後もこの70年間で得ることができた全て(誇りから資源・文化まで)を守りたくば国内企業による経済成長→賃上げは必須だ。そうでなければ外国人の労働者とともに、外国人の経営者のもとで、外国の経営手法や事業開発の方法を学んでいくしかなくなる。それでも学べないなら、学べる在日外国人労働者が将来のあなたのマネージャーになるだけだ。


(別に僕自身は外国人が嫌ではないから問題ないが、嫌な人が問題を起こすのがとても面倒である)