• Tokiwa Eisuke

200人近くの投資家に会ってみてーこれから投資家に会う起業家のみなさまへ

起業しなければ投資家に会うことなんてほとんどないだろう。イメージとしては「お金持ち」「頭がとても良い」という感じだ。僕も起業する前はそうだった。


2年前に起業し、投資家に会うようになった。一部の起業家は例えば騙されたり面倒な人に出会ってしまったりして資金調達の失敗を犯す(参照「本当にあった怖い”起業の”はなし - ダークエンジェル編」)が、僕はとても運が良かったためエンジェル投資家に恵まれた。


しかし大勢の投資家は違う。僕の投資家は希少種であるということが最近やっと200人近く会ってわかったので、これから投資家に会う起業家が時間を無駄にしないように分析・分類(仮説)を共有したいと思う。


※これらは良いとか悪いとかではなく、単純にそういう投資家が多いというだけの話である。それぞれがそれぞれの目的で行動しているだけだ。


投資家も人間=非合理的である


まず僕の間違っていた仮説は「投資家は合理的である」ということだ。合理的とはどういう意味かというと、「議論をして理解をし、どんなコストでもそれを上回る利益が見込めるなら行動をする」「いつか来るチャンスをつかむために日々学習し続ける」ということだ。


しかしこれは間違っている。多くの人間が確証バイアスを持っており、何かへの共感で決めているように、多くの投資家も同じだ。持っているお金の量が多かろうが少なかろうがあまり変わらないのだ。誰もが初期のGoogleに投資したかったわけではないし、誰もが初期のメルカリに投資したかったわけではない。


というわけでどんな点に共感しやすいのかどうかを紹介したい。


共感ポイント1:Exitできるほど儲かるかどうか


スタートアップとは「現在少ししか顕在化していない潜在的な市場を獲得しJカーブの成長をすること」であるため、この通りに進めるなら初期ステージにビジネスモデル(誰からお金を儲けるか)はほとんどできていないだろう。(参照「Startup science 2018 9 イテレーションと計測」)


さらに、純粋な起業家(存在するニーズに対して解決を提供し顧客・ファン・助けたい人の人生を改善する人)にとっては儲けることは当たり前かつ手段であり、「人を助けること」より「儲かること」を目的にしたら正しい製品が作れないことを知っているからそこをメインに置かないかもしれない。


しかし多くの投資家(特に銀行出身に多い「直近の収支を気にする=すでに顕在化している市場だけを見る」人)にはそんなことは関係ない。どうやって儲けるかが分からなければ興味すら持たない。ビジネスモデルは広告なのか、プラットフォームなのか、SaaSなのか、そこまで検証されてなければいけない。


そしてどれだけ儲かればいいかというとExitできるほどだ。日本であれば例えばマザーズ上場や大企業による買収である。そうすれば投資家はキャピタルゲインによって最低限リターンを得ることができる。(Exit後にスケールできようができなかろうが関係ない)


共感ポイント2:アプリやWebでできるお金が少なくても検証しやすい方法


儲かるためにはコストが低くなければいけない。そういう意味でアプリやWebは、最低限作ることも難しくないし、実際にユーザーに会って使ってみてもらえばニーズがあるかどうか検証しやすい。


例えば「1日でこれだけユーザー数伸びました!」みたいなのはとても好まれる。その後1千万ダウンロードいかずにビジネスモデルが回らなかったとしても、ひとまず最初に可能性があるかどうかだけ分かれば問題ない。


さらに起業家がエンジニア(技術がわかる)で、シリアル(事業の進め方が分かる)なら、能力をつけたり調べたりするコストが低いのでなおよい。どんなにニーズが検証できていないプレゼン資料だろうが関係ない。


共感ポイント3:事業領域を組み替えるだけの分かりやすさ


「~~のXX版」という説明の仕方ができるとすごく分かりやすい。例えば「Airbnbの倉庫版」、「メルカリのレンタル版」などである。同じ事業の成長のさせ方を知り合いベースで確認したりすれば想像しやすい。


さらに良いのはそれを使う人(ターゲットユーザー)が投資家の身近にいることだ。例えば主婦や高齢者、特定の職種など。そうすると「ああ、確かにそういう人いそうだし使ってもらえそう」となる。


投資家の背景や思いによっては、この点が分かりやすければコストが高い手法でも問題ない場合がある。例えばディープテック(DeepTech)と呼ばれる分野である。「CPUの次」とか「発電の次」とか未来らしさが重要である。


そして日本にはこんなスタートアップが出てくる


1、日本経済というとても特異な環境下でWebやアプリで検証し、上場までできてもそれ以上スケールできなくなり(よりリテラシーの低い人や海外の市場にアプローチできない)、ビジョンとは外れたビジネス(例えばひとまずFintech)もやるようになっていくこと。


2、流行りの事業領域(AIやブロックチェーン)や儲かりそうなビジネスモデル(B2B SaaSやプラットフォーム)でありえそうなニーズを投資家に見せて、うまく騙して数十億円で出資してもらったり買収してもらったりすること。

※参考「平成元年と平成30年の「世界時価総額ランキング」を比較すると、バブル期の日本が相当ヤバかったし世界の変動も見て取れる


とはいえこれは仕方のないことである。これが投資家という名前の人間なのだ。どんなに憂いでも仕方のないこと。こういった投資家が苦手なら、起業すらしないか、別の少数のタイプの投資家を探すしかない。


逆に言えば以下にはあまり興味がない

・仮説検証ベースで発見されたストーリー性のあるニーズ(想像しづらい) ・マザーズ上場以上のExitを狙う(最低限上場してもらえればいい) ・「破壊的イノベーション」とか「日本から世界に」とか(そんなものは起業家への建前) ・仮説検証をもとに決まった手段がハードウェア(コストが大きい) ・基礎技術を応用した産業の創出(インターネットの基礎技術すら分からない)


もちろん上記に興味がある投資家もいるが、かなり少数であり、見つけるのがとても難しいため、個人的にはトラクションを最低限つくって事業会社と組むのがいいと思っている。なぜなら事業会社は顧客のニーズを知っており、事業シナジーがあればリソースを提供してくれるからだ(もちろん全部じゃない)。


(理想を言えば、VCの人が事業会社に転職してほしい。事業会社はあまり外に出てこないし、「スタートアップ」の定義がわからずに受託開発になってしまうこともあるからだ。)


ちなみに僕の話を最後にすると、「ユーザーがインド」で「ハードウェア」であることが大きな理由で投資を断られた。なので逆にいえば「グローバルスタートアップ」や「ハードウェア」に文脈の強い投資家を探す必要がある。


例えばハードウェアなら、大阪や京都、そして中国はものづくりの文化がとても強いので興味を持ってもらいやすい。


それからグローバル展開の場合は、例えば韓国やイスラエルなど、自国のマーケットが小さい国の投資家ほど興味を持ちやすい。一方で自国のマーケットが大きい場合(日本やインド、インドネシア)などは「グローバルで勝つ」という考えにはなりづらい。


それからめちゃくちゃ人数は少ないが、そういった文脈がなくとも本当に合理的に投資できる人もいる。ゼロベースで「なんで?」と聞くだけで理解できる、もしくは少し聞いて理解できるほどに普段から色々学習している人だ。弊社のエンジェル投資家は全員それに当たるので本当に運が良かった。


これらもあくまで仮説であり、本当にどうなるかはわからないが、引き続き頑張っていきたい。