• Tokiwa Eisuke

iPhoneの凄さは実は単純なのに、意外と多くの人が気づかない

更新日:2021年8月9日

イノベーターの事例としてよく挙げられるのはスティーブ・ジョブズだろう。また、時価総額への貢献でも、マーケットの創出でも、利益・売上の高い製品としても、Apple史上一番評価されるのはiPhoneだ。


このiPhoneに憧れて、一部の人は起業し、新しい世界を作る・世界を変える製品を作りたいと考えている。人によってはiPhoneを分解して、その内部の機構の素晴らしさに感嘆する。


しかし、具体的にはどうすごいのだろうか?技術がすごいのか?そしたら誰もまねできないのか?いやそんなことはない。私の気づきを共有したい。


1、シンプルなポジショニング


こちらはスティーブ・ジョブズのiPhoneを発表した際のプレゼンテーション動画である。特に4分30秒あたりを見てみたい。

なんと彼の提案は当時多くの人が使っていたガラケー(Cell Phone、フィーチャーフォン)の改善ではなく、Moto QやNokiaなど少数のビジネスマンが使っていたスマートフォンの改善であったことが分かる。


普通のビジネスマンなら「少数の人が使っているなかで、さらに少数の人に使われることって大して儲からないのでは?」と思うだろうが、これはまさにピーター・ティールの「小さい市場の独占」である。


※プレゼンではよく主観的でわかりづらい形容詞は使わないようにと言われるが、スティーブ・ジョブズは「smart」と平気で使っていたりもする。


2、ちょっと形を変えただけ


というわけでスティーブ・ジョブズはスマートフォンを改善させると提案する。ただ大事なのはどう改善するか?だが、これもいたってシンプルというか、もはやシンプルすぎてこれを信仰している人たちがあほらしく思えてくるほどだ。


それはキーボードをなくして画面を大きくしただけだ。例えば最近よくやられているようにメガネ、スピーカー、イヤホン、ロボットといった新しいデバイスでもなく、また画面を折り曲げられるようにするといった形を大きく変えるのではない。


TfallやDysonしかり、何か新しいことは意外とやっていない。多くの破壊的イノベーションは単純な引き算によって行われる。特殊な新素材や新しい五感インプットデバイスではない。日本の技術シーズを探してイノベーションを起こそうとする動きは完全に間違っている。


ただこの発想に行き着くにはハードウェアの知識だけでは到達できない。画面の中にキーボードを表示するというソフトウェア的な観点が必要である。このメタ的な観点の移動が「デザイン」の強さである。


3、ハードウェアのなかでソフトウェアで儲けるビジネスモデル


そういったソフトウェアとハードウェアを行ったり来たりする観点から、ビジネスモデルもさらに強化される。それがiTunesやAppStoreである。音楽やアプリの流通プラットフォームを構築することができた


ハードウェアのビジネスモデルとは「売り切り・買い替え」である。製品の機能が時間とともに落ちることで買い替えてもらう。その際には新機能がついていて、顧客は新しい体験ができるし、メーカーも儲かり続ける。そこへの信仰・盲目さが日本のメーカー大企業をダメにした。


実際の顧客は新機能にそこまで興味はない。むしろ新機能が多くなっていくことでどうやったら使えるのが分かりづらくなる。さらに無駄遣いしたくないからできるだけ顧客は長く使いたい。だからメーカーはうまい具合に買い替え需要を回せない。


その一方で儲けることができたのがインターネット企業である。広告や手数料、サブスクリプションといった新しいビジネスモデルを作ったことで、安くたくさんの顧客を獲得した。(シェアリングエコノミーやC2Cなんてそれっぽい名前がついているが、ハードウェアも「節約→使いまわし」が行われるようになった。)


iPhoneはハードウェアにソフトウェアのビジネスモデルを付け足したのだ。とてもシンプルなのだが、iPhoneが発売されて10年たっても、ソフトウェアとハードウェアの垣根を越えてビジネスモデルを構築できる人はとても少ない。インターネット企業はハードウェアが、メーカーはソフトウェアが分からないからだ


だからこそ弊社は資金調達に苦労していることが分かったのだ笑。